「私は『時ほぐし』に並んだ商品も、『時ほぐし』を訪れるお客様も、商店街の空気も全部好きなんです! 何より――」

「何より?」

 店長が問い返す。

 時花は喋りかけて、言葉に詰まった。店長の美貌を仰ぎ見る。見つめ合う瞳と笑顔。その目笑(もくしょう)は、とてもいとおしい、かけがえのない異性像だ。


「何より、私は、店長のことも好き……ですから……!」


 言った。

 言い切った。

「あはは、ありがとうございます。僕も時花さんが好きですよ、貴重な従業員(・・・)ですしね」

「あぅ……そ、そういう意味ではなくてですね」肩がずっこける時花。「私はずっと、店長と一緒に、一緒に――……」

「一緒に?」

「い、い、一緒に…………は、働きたいんですっ!」

 この言葉が限界だ。照れる。顔が発火しそうなほど熱い。今にも溶解しかねない。