「釈明は諦めた方が良いかも知れません。キリがないので」
店長も紅茶をすすりつつ、事務用のパソコンを一瞥した。
ずっと起動しっ放しのディスプレイには『時ほぐし』の通販サイトが映っている。
トップページにはでかでかと注意書きがされており、それは風評被害を真っ向から否定するアナウンスだった。
『当店に対する中傷は、事実との相違がございます。関係者各位、そして利用者様におかれましては、変わらぬご愛顧をよろしくお願い申し上げます』
ネットにおけるせめてもの対処だったが、この一文で鎮火できるとは考えにくい。
一刻も早く原告側と面会し、話し合うことが急務だろう。
「裁判になるのか、それとも事前の話し合いで和解に持ち込めるのかは不透明ですが……それまで悪評は止まりませんね。覚悟した方が良さそうです」
「覚悟、ですか……」唇を噛む時花。「もしも悪評を消せなかったり、裁判に負けたりしたら……『時ほぐし』は潰れちゃうんでしょうか?」
潰れる。
最悪の未来が脳裏をよぎる。
嫌だ。
そんなのは耐えられない。