ただの語呂合わせだが、名は体を表すとも言う。
時花は呆れるやら感心するやら、どこまで本気でどこから冗談なのか判別し損ねた。今いち本心が見えない。かっこいいけど変人だ。
「どうですか、緊張はほぐれましたか?」
めざとく時花の心境をおもんぱかる眼力も、鋭い。
まさか、わざと奇矯な話をしていたのか?
さすがは客商売だと、時花は舌を巻いた。人を観察する能力に長けているようだ。
「大丈夫、慣れればすぐに解きほぐれますよ。当店は高級時計で癒しをもたらすのがモットーですから」
「解きほぐれ……癒し……?」
「時計を介してお客様を解きほぐすから『時ほぐし』――これが店名の由来です」
あたかも決め台詞のように、店長は一笑した。
そのまま履歴書を持って席を立ち、事務室のファイルに納める。
「このあと、お時間はありますか? 雇用契約書を締結後、店内業務の流れや規則、マナーと接客マニュアル、商品の取り扱いなどを研修したいのですが」