3.
「当店は潔白ですっ!」
明くる日、時花は抑圧に耐えかねて客の一人にぶちまけた。
いきなり営業スマイルで自己主張され、名も知らぬ来客たちは「お、おう……」と曖昧に受け流すしかない。
「はうっ、しまったです……うっかり口が滑って失言を……」
時花は赤らんだ頬を両手で覆い、脱兎のごとく事務室へ逃げ去――ろうとしたが、居合わせた店長に阻まれた。一見すると笑顔だが、実態は絶対零度のごとき冷笑だ。
「時花さん、勤務中にどこへ行くのですか?」
「あっ、はい……申し訳ございません」
しおしおと客に向き直り、平謝りする他ない。
(私としたことが……ついカッとなってしまいました)
間抜けな性分は今日も健在だ。
爆弾を抱えつつも『時ほぐし』は営業を続けている。相変わらず店への誹謗中傷はとどまる所を知らず、罵詈雑言も多い。口コミが現在進行形で拡散されているせいだ。
「先ほどは失礼しました、ご用件は何でしょう?」