「メールの差出人を確認しましょう」
店長が一件ずつ、しらみ潰しに送り主を確かめた。
それだけでも面倒極まる雑事だったが、放置するわけにはいかない。見守る時花もろくに仕事にならないし、ストレスが積もる。今にも爆発しそうだ。
「当店での購入履歴がある方も多いですけど、全くの新規客もいらっしゃいますね……恐らく『捨てアカ』を作って大量にスパムを送り付けているのでしょう」
「嫌がらせってことですか、店長?」
「はい。これも何者かの工作でしょうか? 当店の悪評をばらまいて、業務を妨害したがっているとか――……おや?」
さらに異変を発見した。店長は手を止め、目をすがめる。
ごった返すメールの中に、一通だけ看過できない密告文が記されていた。
「矢陰光さんのお父上からです……なになに、ネットの掲示板やSNSの書き込みで『時ほぐし』を攻撃するよう拡散されているから心配になった、ですって?」
「か、拡散っ!?」
「なるほど、それで急にメールが増えたのですね。かつての購入者様も噂を聞き付け、問い合わせを送って来た、と……」
「風評被害じゃないですかっ」