ヒモ大学生の質入れを拒否し、告訴をそそのかした元凶――。

「時花さん、本気で言っているのですか?」

「もちろんですっ! ヒモ大学生と共謀してイチャモンを付けた線も否定できません!」

 時花はここぞとばかりにまくし立てた。

 こちらに非がないと仮定すれば、悪いのはあちら……原告側しかない。

「ヒモ大学生は『時ほぐし』で化けの皮を剥がされ、当店を逆恨みしてたんです。だから鑑定士にわざと偽物の鑑定をさせて、それをネタにうちを潰そうとしてるのかも!」

 根も葉もない憶測だが、話の筋は通る。

 経緯を振り返っても、ヒモ大学生に問題があったのは明白だ。であれば、諸悪の根源を彼に求めるのは自然な流れだった。

「だと良いのですが……」

 店長はほんの少しだけ、肩の力を抜いた。

 自責の引きつった笑みが、いくばくか和らいだ巧笑(こうしょう)に変わる。作り笑顔ではあるが、時花の助言が功を奏したようだ。

 彼の笑中(しょうちゅう)はいかばかりか。その顔貌には千万の感情が隠されている。

「おや? メールがたくさん来ていますね」

 不意に、店長が異変を察知した。