「特に風師さん、あなたのお名前がとても気に入りました」

「はひ? 名前ですか?」

 しかもこの店長、着眼点がちょっとおかしい。

 職歴や所有資格よりも、名前が採用ポイントだと言いたいのか……?

「風師時花……カザシ・トキカ……『(とき)(はな)挿頭(かざし)にせよ』という格言があるのです」

「こ、ことわざか何かですか?」

「はい。さり気なく『時』に関連している点が素晴らしいですね!」

「時……ああ、時計店ですもんね」

「その通り!」半立ちになる店長。「時にまつわる文言は、とても貴重です。時計を取り扱う者として、時の語呂が入った人間を身近に置きたいのです!」

「そ、そんなことで採用を?」

 時花の名付け親に感謝すべきだろうか。

 たまたま格言にそっくりな名前を付けてくれて、ありがとう……?

「言葉の影響は馬鹿に出来ませんよ。僕だっていわば、自分の名前に導かれて時計店を始めたようなものですから」

 店長の名前?

 時花はもう一度、脳裏に思い出した。

「時計のことならお任せ、でお馴染みの『時任』です」

 略すと時任(・・)か。