奴はミツトシと呼ばれていた。なるほど、本名は石上三年か。
ネット通販も利用していたから、個人情報が店のパソコンにばっちり登録されている。
石の上にも三年という『時間に関することわざ』を連想させるのも気に食わない。
「彼は先月、僕たちに赤っ恥をかかされましたからね」肩をそびやかす店長。「その腹いせに、あることないことまくし立てて弁護士に泣き付いたと見るべきでしょうか」
「どんな因縁を付けて来たんです?」
「贋作の販売、とありますね」
店長はデスクに放り捨てた書簡を一瞥する。
「が、贋作っ?」
「ブランド品の中古販売には付き物ですが、海賊版の疑惑をかけられました」
「ひどい! 濡れ衣ですっ」
「まずは民事裁判で損害賠償請求、それに勝ったら刑事告訴にも持って行くつもりのようです。いやはや、ほとんど脅しのような文面ですね」
「あんまりです……私の店長がそんなことするわけがありません!」
興奮してつい「私の」と所有権を主張したが、店長には聞き流された。少し寂しい。
「もちろん濡れ衣ですとも。贋作疑惑をかけられた品物を確認してみましょう」
店長は石上三年の購入履歴を掘り起こした。