「一体どこのどいつですかっ。店長を訴えるなんて信じられません……いや、まぁ、私も店長の全てを知ってるわけではないですけど……」
「僕にやましいことなどありませんよ。内容を読む限り、これは当店への嫌がらせ、逆恨みと言った面が強いと感じました」
「嫌がらせ……?」
的を射ない時花を尻目に、店長は書簡の束を一枚ずつめくってみせた。
「原告の名は石上三年。二二歳の青年です。時花さんも聞き覚えがありませんか?」
「え? ありましたっけ……?」
さっぱり見当が付かない。
店長は踵を返し、事務室へ舞い戻る。追従した時花は、彼がパソコンから顧客名簿を呼び出すそつのない所作に見とれた。マウスをクリックする手つきさえ格好良い。
「先月、女性に腕時計を貢がせていたヒモ大学生が居ましたよね?」
「ヒモ…………あっ!」
言われて思い出す。
女性にブランド品をねだって私腹を肥やす『偽りのステータス』――。