「店……長?」

 しゃんと伸びた店長の後ろ姿は、彫刻のように美しい。決して長身ではないが、平均身長よりやや上の整った頭身は眼福だ。

 ジョルジオ・アルマーニのダブルスーツを颯爽と着こなすスマートさは言うに及ばず、栗毛の頭髪は照明を浴びて宝石のように煌めく。細くしなやかな手足は芸術的なまでに艶っぽい。立っているだけで男性の色気を帯びているのが罪作りだ。

(ひょっとして……冬の寒さで店長が凍結しちゃいました?)

 時花は間抜けすぎる心配をした。

 大急ぎで店長の正面へ回り込み、ご尊顔を覗き込む。彫りの深い鼻梁、秀麗な眉目(びもく)を引きつらせて、苦笑いを浮かべたまま時間が止まっているかのようだ。

 無論、実際には呼吸しているし、まばたきもある。

 手に携えた一通の書簡を開封しており、それを愕然と見下ろしていた。

「て、店長?」

 時花は恐る恐る手を伸ばし、店長の眼前でひらひらと振ってみせた。

「…………はっ!?」

 店長が我に返った。

 あ、動いた。