三年前から時間が停止したかのように佇む、愛娘。

 髪型も化粧も立ち居振る舞いも、コロンの香りに至るまで、娘が再現されていた。

「光なのか!?」

「左様でございます……なんちゃって」

 声色は違った。

 老紳士の脳内で、警鐘と拒絶感がよぎる。

 これは扮装だ。変装だ。仮装だ。偽装だ。

「おぬし、あの新米店員か!」

「見破るの早いですね」ぺろりと舌を出す時花(・・)。「私と光さんが似てると聞いたので、見よう見まねで着飾ってみました」

「ふ、ふざけておるのか! わしをぬか喜びさせて、嘲笑(あざわら)うつもりじゃったか!」

 憤怒が押し寄せる。

 だが、それも時花の想定内だったようだ。

 行方不明者になりきるのはデリカシーがないと自覚した上で、あえて決行した。

 それはひとえに、老紳士が囚われた『呪縛』を解きほぐす(・・・・・)ためだ。

 この店に縛られた父親を、解放するため。