時花に似ているというから思い付いた作戦なのだが、写真映えの時点で遠く及ばない。
月とスッポンではないか。
同じ華奢な体型でも、時花はちんちくりん、写真の女性はしなやかな妖艶さを内包している。化粧も上手だ。顔の角度や採光も意識して被写体になっていることが見て取れる。
「まぁ、単純な顔立ちやスタイルでは桁違いですね」
店長がずばり断言した。
時花はアルバムの重みに押し潰された。しばらく立ち直れそうにない。
「ですよね~……」
「しかし」片目をつぶる店長。「雰囲気や愛嬌が、そっくりですよ。ちょっとしたことで慌ててドジったり、同じ轍を踏んで粗相したり……それでも一生懸命、人の期待に応えようとするひたむきさ、健気さ、一途さ……魂の在り方が、僕は似ていると感じました」
魂の在り方。
人間の内実、そして本質。
振る舞いや仕草が同質ならば、まだ勝ち目はある。
時花は彼女になりきれる――。
「彼女の名は、矢陰光さんと申します」
「矢陰……光さん」