4.
時花は一か八かの賭けに出た。
いい考えがある、と豪語したものの、見切り発車だったことは疑いようがない。所詮は店長の了解を得るための大言壮語だ。
「店長、彼女さんのお名前を教えて下さい。それと、顔写真があればお借りしたいです」
「何を始めるつもりですか?」
店長は怪訝そうに眉をひそめたが、時花に興味を示しているのは間違いない。重たい腰を上げ、事務室の書棚から一冊のアルバムを取り出してみせた。
「僕と彼女が交際していた頃の写真や、開店のお祝いで撮影した写真などが納められています。これでよろしければ、どうぞご覧下さい」
「ありがとうございます……ごくり」
ずしりと重みを感じるアルバムだった。
実際のサイズは小さめで薄いのに、とても重い。
(重いです……このアルバムに詰め込まれた思い出のウェイトでしょうか)
時花はこわばったものの、ためらっていては元も子もない。
覚悟を決めてエイッと一気呵成にアルバムの表紙をめくり上げた。