「残念ながら、何も出来ません……本物の探偵でさえ手がかりすら掴めないのですから」
八方ふさがりだった。
根本的な解決は、恐らく不可能だろう。
彼女が生還しない限り、老紳士の心を癒せないし、店長の孤独な闇も消えないのだ。
(私は……この気持ちは何でしょう?)
時花は複雑な心境に支配された。
不憫な彼女には戻って来て欲しい。
しかし彼女が復帰したら、店長は彼女と復縁してしまうのではないか?
その展開は非常に困る。大好きな店長を奪われてしまう。
「う~ん……で、でも、悩んでいても仕方ないですよね……」
時花は握り拳を作った。
店長の真似して紅茶を一気に飲み干すと、決起するように席を立つ。
「時花さん、どうしましたか?」
「彼女さんの帰還は、私にはどうにも出来ませんけど……あの老紳士をここから解放するくらいなら、私にも出来ると思うんです!」
「何をする気ですか? これは繊細な問題ですよ。時花さんは事情を理解していただければ充分です。余計なことはせず――」