最初は開店費用の借金などで苦しい生活でしたが、二人は幸せでした。

 やがて二人は、交際を始めました。

 彼女は相変わらずドジでしたが、そこは僕が補助して、何とか切り盛りしました。

 借金を返済し、ようやく軌道に乗り始めた頃……再び悲劇は起こりました。

 彼女のドジが、致命的な失策を生んだのです。

「大金をなくした」

 そう彼女は告げました。

 高級品を扱う都合上、キャッシュだと何百万円もの札束が、一日で動きます。

 カード払いならともかく、現金の取り扱いは慎重を期さねばなりません。

 店の精算を終えた彼女は、大金を銀行へ納めに向かったのですが……札束の入ったかばんを、道中で川に落としてしまったのです。

 紛失届を警察に出したものの、戻って来ることはありませんでした。

「私がドジなせいで……」

 彼女はひどく落ち込みました。

 僕は彼女を励ましたのですが……そんな僕の配慮が、逆に彼女を追い詰めたようです。

 彼女は着の身着のまま失踪し、行方不明となりました。