3.




「私、判りましたよ! あの老人が何者で、どうして高い出費をしてまで自ら首を絞めているのか……店長に教わらなくても、一人で解きほぐせました!」

 時花は目一杯、顔面をほころばせた。

 独力で一つの解答へ至ったことも歓喜の理由だが、この高揚感はそれだけではない。

 店長の過去に迫れた――好きな人を深く理解できた――のが、たまらない快挙なのだ。

「では伺いましょうか。時花さんのたどり着いた真実とは何か」

 店長はダブルスーツの襟を正した。

 時花の弁説を真っ向から受け止めようとしている。

 時花はそれが嬉しくて、小さな胸を弾ませた。店長とは反対に胸襟を開く思いで、推理を口述する。

「かの老紳士は、ここで会いたがっている人がいらっしゃいましたよね? 恐らく私よりやや年上の……店長と同年齢ほどの女性が」

 女性、と断言した瞬間、時花の胸がちくりと痛む。

 妙齢の女性が店長のそばに存在した事実は、時花の恋心をほのかに傷付ける。

 万が一、店長の恋人だとか、婚約者だったら――。