謎解きは店長の役割だったはずなのに――。

 探偵役と助手役の逆転。

 いや、さらに(たち)が悪い。店長は真相を知った上で、わざと時花を焚き付けているのだ。

(私が時計にまつわる謎を解きほぐすなんて……! 店長、さり気なくサドですねっ)

 余計な推理を押し着せられて仕事が手に付かず、一層叱られたのは言うまでもない。



   *



 翌日になっても時花は謎を解けなかった。

 そもそも考えるのが苦手なのだ。だから短慮でドジを踏むし、考えを論理的に構築できないからそそっかしいし、物事を能率的にこなせない。

(自分で自分のことが嫌になっちゃいますね……我ながら)

 朝からしょげ返った顔付きで、時花は出勤した。

 思考が老紳士のことで支配されてしまい、業務に身が入らない。

 スーツは乱れ、化粧は歪み、手付きは震えて、ヒールを引っかけて転びかけた。

 無為に時間ばかりが過ぎて行く。

 結局この日は、年末にも関わらず売上を伸ばせないまま夕方を迎えた。