「ここのブランド品は、本当に壊れやすいのう! どうやったらこんな毎月必ず修理を頼むような不良品ばかり売りに出せるんじゃ!?」

「申し訳ございません、お客様。耳が痛い思いでございます」

 猛省する店長に、時花は耳を疑った。

(ふ、不良品っ? 私の店長が、そこまで腕が悪いとは思えませんけど……!)

 時花がここに勤めて以来、修理の依頼を見たのは初めてだ。

 つまり老紳士だけが何度も『不良品』を店へ持ち込んでいることになる。

(ひょっとして……この方はクレーマーなのでは?)

 クレーマー。

 苦情をわざと持ち込んで困らせたがる、難儀な冷やかし客のことだ。

 中には賠償金をせしめようとする悪質なクレーマーも居ると聞くが、この老紳士は金銭を要求せず、飽くまで口頭で罵声を浴びせていた。

「恐れ入りますがお客様。こちらの品物は、昔から壊れやすいことで有名な時計で……」

「だから何じゃ! わしはそのメーカーが好きなんじゃ。毎月買うほどにな!」

(うちに文句があるなら、違う店へ行けば良いのに……)

 時花はますます混乱する一方だ。

 常連客のくせにクレーマー。