やはり中古売買が中心なのだ。質屋も兼ねているのだろう。

(一流大手商社から、場末の小売り店へ転職……と聞くと格落ち感は否めませんけど、私にはこれくらいのリスタートが身の丈に合ってる気がします)

 決して自営業を馬鹿にしているわけではないが、時花はそんなことを考える。

 高級品を扱う場末の店。恐らく客足は少なかろう。この店は薄利多売ではなく、少ない客から高い代金を支払わせて利益を得るビジネス・モデルだ。

 客足が少ないなら、のんびり屋の時花にも務まりそうだった。経理もめまぐるしい大手ではパンクしたが、この店の規模ならば落ち着いて能力を発揮できる……と信じたい。

「こんにちは、失礼します」

 ガラス張りの回転扉が入口だった。

 中へ押し開けると、ドアベルが軽やかに鳴り響く。

 店内はとても落ち着いている。開店前のため、入口には『準備中』の札が吊るされていたが、この時間に面接の予約を入れていたので、時花は躊躇しない。

 ドアの鍵も開いており、店側も彼女の到来を待っていたことが窺える。

「やぁ、いらっしゃい」

 爽やかな甘い美声が、店の奥から返って来た。