笑顔を曇らせる店長に対し、時花はせいぜい小悪魔っぽい媚笑(びしょう)を浮かべた。
「私のことは下の名前で呼んで下さい! 風師じゃなく『時花』で!」
名前呼び。
普段は仕事上、苗字で呼ぶのが通例だ。しかし時花は、もっと両者の距離を縮めたかった。だからつい、クリスマスにかまけて無茶な提案をしてしまった。
まじまじと店長を見上げた彼女に、彼は一本取られたような微苦笑をよこす。
「そう来ましたか――まぁ特に問題はないでしょう。これからもよろしくお願いします、時花さん」
「ふああっ! やった、名前呼びをいただきましたっ! も、もう一回呼んで下さい!」
「時花さん」
「ひゃああっ! も、もう一声!」
「……そろそろ出かけましょうよ、時花さん」
「ほおおおおっ!」
冬の寒さとは裏腹に、時花が熱暴走しっ放しだったのは言うまでもない。
第二幕――了