「いえいえととととんでもない」呂律が回らない時花。「時間なら有り余ってます! だって私、ヒキコモリですから! 今夜は独りで不貞寝するつもりでした!」
むなしい弁明をする時花だったが、店長には伝わったようだ。
「では参りましょうか。食べたいリクエストがあれば遠慮せずおっしゃって下さい。ご希望に合わせて、レストランの空席状況を調べますので」
勇気を出して良かった――時花は感極まった。
好きな男性とクリスマスを過ごせるなんて、夢のようだ。
「ついでに風師さんへのプレゼントも買いましょう。欲しいものはありますか?」
「ええええっそ、そそ、そこまで厚かましい真似は出来ませんよっ」
「ですが僕も、もらいっ放しは気が引けますし」
店長は頑として譲らない。
時花はどう答えるべきか悩んだ末、一つの要望が脳裏をよぎった。
先ほどの男女が決裂する前、カレシをミツトシ君と呼んでいたことに着眼したのだ。
「んーと……でしたら、私のお願いを聞いてもらえますか?」
「お願い? 何ですか、風師さん」
「その『風師さん』っていう他人行儀な呼び方をやめて下さい」
「……と言うと?」