店長が両手で受け取ったのを見届けたとき、もう死んでも良いと思った。

 時花はぺこりと一礼し、逃げるように室外へ踵を返す――。

「待って下さい、風師さん」

「――はい?」

 店長の手が、時花の手を掴んだ。

 肌と肌が触れ合う感触。

 店長は正面へ回り込むと、美貌に満面の笑みを湛えた。

「風師さん、このあとお時間はありますか? よろしければ夕飯をご一緒しませんか?」

 ……予定を聞かれた。

 夕飯?

 一緒に?

 時花は目をぱちくりさせる。

 それは、つまり、デートのお誘い……?

「ええっ? よ、よよよ、よろしいんですかっ!? 私なんかと一緒にっ?」

「プレゼントのお礼もかねて、美味しいものを食べに行きましょう……もちろん急な提案なので、風師さんの都合が悪ければ断って下さって構いませんよ」