「し、商品が心配なんですか……」
「時計のせいで人が不幸になるのは、見たくありません。それは僕の本意に悖ります。そんなことになるくらいなら、いっそ顧客を切り捨てる方が益しというものです」
店長は断言した。
おのれの信念を曲げない姿勢に、時花は心を射抜かれる。
(さすが店長、素敵です! 店の利益にならなくても、真実を暴く……なかなか出来ることじゃありません!)
知らず知らず店長に寄り添い、あわよくば抱き付こうとした。
あいにく願望は叶わず、近寄ったそばからさり気なく距離を置かれ、一定の感覚を保ったままグルグルと店内を追いかけっこする。
「ところで風師さん」手で制する店長。「本日もそろそろ店じまいです、片付けと精算を済ませましょうか」
「ちぇ。は~い」
いつの間にか日は落ち、夜のとばりが下りている。
繁華街なら夜遅くまで営業するのだろうが、商店街の末端では客足もほぼ絶える午後七時が閉店時刻だった。夕飯時に退勤できるのは嬉しい。
店を閉め、精算を締める。更衣室で服を着替えた。