店長は返事すら待たず、やる気満々で時花に命令を下した。

「風師さん、やっぱりこのメールに返信しましょう」

「今からですか?」

「そうです。文面は『店のシフトが終わってから、一緒に夕食でもいかがですか?』とでも書けば、きっと青年客は飛んで来ますよ。ナンパが成功したと思い込んで、ね」

「は、はぁ」

 時花としては青年客の口車に乗りたくなかったが、店長の命令ならばしょうがない。

 送信し、数分待つ。

 ぴろりん、と電子音が鳴った。メールの返信が来たのだ。

『了解しました! すぐに店へ向かいますよ!』

 いや、すぐには来るなよ。

 店のシフトが終わってから、と前置きしたのに、あの男は認識できていないようだ。

 直後、店頭のドアベルがさんざめいた。

 回転扉が巡り、例の青年客が入店したのだ。近所に待機していたのだろうか。あまりにも早すぎる到着だ。

「こんばんは! メールでOKをもらえたから、さっそく迎えに来ましたよ――……」

 ご機嫌な声音(こわね)と足取りだった。