時花もいたたまれず瞑目する。先刻、青年客にメールで口説かれた一部始終を、証拠としてさらしたのだ。
「あなたという恋人がありながら、かの青年は裏で女漁りを続けていたという証明でございます。店で一度見かけただけの従業員にも迫るさまは、性欲の強さが推し測れますね」
「ど、どうしてこんな女を」
女性客が時花を睨む。
こんな女で悪かったわね、と時花は内心で舌を出した。
店長が解説を続ける。
「当店の従業員には、正装を義務付けています。そのフォーマルな身なりが、青年客には裕福に映ったのでしょう。決して従業員自身が高貴なわけではないのですけどね」
「……馬子にも衣裳ってよく言われます」
時花は顔を手で覆う。
「ま、マジなのこれ?」たたらを踏む女性客。「アタシはこんな男に乗せられて、まんまと高い買い物を貢がされそうになってたの?」
「左様でございます。よろしければご本人をここへお連れしましょうか」
「えっ?」
女性客が目を見開く。