「風師さん。パソコンを持って来て下さい。メール・ボックスをお見せしましょう」

「かしこまりました!」

 時花はおおせのままにと言わんばかりに、うやうやしくお辞儀した。

 踵を返して事務室へ引っ込むと、デスクに置かれていたラップトップ・パソコンの電源コードを引っこ抜いてから、両手で抱える。

「風師さん、転ばないよう注意して下さいね」

「わ、判ってますってばぁ」

 時花のドジを警戒する店長が抜け目ない。

 事務室のドアをくぐるとき、敷居に足を引っかけそうになった時花は、気まずい面持ちで歩を進めて、何とかフロアに舞い戻った。

 ラップトップ・パソコンは充電も満タンで、しばらくコンセントを外しても作動する。

 本来は部外者に見せてはならない業務用メール・ボックスを、例外的措置として女性客に一部分だけお披露目した。

「このことは他言無用でお願いします」悪そうに口角を上げる店長。「青年客が当店の女性従業員に、デートのお誘いを申し込んだメールがございます」

「…………!」

 女性客の目の色が変わった。