「ぜ、全部カレシの嘘八百、口先でアタシを手玉に取って、まんまと高級ブランド品を買わせてから、次の女に乗り換えようとしてたってわけ!?」
「……はい」
店長は申し訳なさそうに目を伏せた。
女性客が傷付くのは避けられないが、真実を伝えるためには仕方がない。
「ゆえに、青年客はあなたのヴィトンが偽物であることすら見抜けませんでした……彼は本物のブランドなど知る由のない、貢がれるだけの庶民だったのですから」
「あああっ……!」自らを抱きすくめる女性客。「た、確かにアタシの服が偽物だってこと、カレシは全然気付いてなかったわ……!」
「それはひとえに、彼が素人だからです。あなたの虚飾を察することも出来ず、本物のヴィトンを着飾ったお嬢様だと思い込んでいたのです」
「そんなぁ……アタシは金持ちのカレシとお近付きになりたくて、偽物を一式そろえたのに……そのカレシも虚栄だったなんて!」
お互い様というわけだ。
どちらも、お互いを騙そうとした。
人間の浅はかさが浮き彫りになる一件だった。ブランド時計が暴いた心の闇。
「アタシ、毎日必死にアルバイトして、周りからお金も借りて、ようやくカレシの欲しがってたロレックスを買う資金を貯めたのに……無駄骨だったのね!」