店長の話が本当ならば――時花はもちろん肯定して疑わないが――青年客は複数の女性と付き合っては別れてを繰り返していたことになる。
重度の女タラシであり、飽きたらすぐ切り捨てる冷血漢というわけだ。
「代金の支払いも、全て女性に貢がせておりました」
「今回のアタシみたいに、プレゼントさせてたってこと……?」
女性客の声が初めて疑惑を帯びる。
「彼は稀代のヒモですね。お得意様を悪しざまにけなすのは気が引けますが、それが真実であればやむを得ません……あの方がお召しになられていたファッションも全て、別々の女性から与えられた欺瞞の集合体なのです」
あの青年客はタカリの天才だ。あの手この手で令嬢を次々と篭絡し、自分に高級品を献上させていた。
「そうやってブランド物に身を包んだ彼は、あたかも裕福な令息であるかのように振る舞っていた次第です」
「み、見せかけだけの大嘘つきって言いたいの?」
「その通りでございます」
店長は深々と頭を下げた。
女性客はぶるぶると足腰が震え出す。