「どういうことよ! 意味判んないんだけど?」

 女性客の怒髪が天を()いた。

 詰め寄って抗議するも、店長は澄まし顔でじっと見つめ返す一方だ。

「お客様ご自身も、疲れたのではございませんか? 偽物のヴィトンで自分を粉飾し、彼氏のために寝る間も惜しんでアルバイトするなんて、身も心も窮屈でしょう?」

「な、なんで偽物って判ったのよ!?」

 女性客はたじろいだ。

 店長の慧眼はごまかせない。怜悧な瞳で、うっすらと憫笑(びんしょう)する。

「僕は鑑定士ですから、そのヴィトンがコピー品であることはすぐ見抜けます」

「か、鑑定士……!」

「あいにく、あなたの彼氏は見破れなかったようですが……だとすると、彼氏もまた本物を見る目がない虚飾にまみれた詐欺師(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)ということになりますね」

「ちょ、人のカレシにひどい言い草――」

「あの彼氏は、あなたが信じるようなお坊ちゃまではありませんよ。エリートでもないし、裕福でもありません。あなたと同じ、真っ赤な嘘なのです」

 風向きが変わった。

 女性客の剣幕に影が差す。ついでに時花も耳を疑った。