(いつまでも引きこもってたら埒が明かないので、億劫ではありましたけど再就職を志しましたが……そっかぁ、もう冬なんですね……)

 夏と秋をタイムスリップで飛ばしたような冬模様は、現実味がない。どこか夢心地だ。

「え~と、ありました……このお店ですね、面接会場」

 時花はスマホの地図アプリを参考に、一軒の店舗を発見した。

 閑静な住宅地に開かれた商店街がある。周辺住民が日々利用する食料品店や雑貨店、はたまた文具店だの家電屋だの定食屋だの、個人経営の小さな店が軒を連ねている。

 その末端――本当に商店街の場末だ――にぽつんと孤立した、他の店とはやや趣向の異なる建物があった。

 目抜き通りの中心からは明らかに外れており、その界隈だけ活気がない。

 静謐に佇むその店は、壁一面が透明なガラス窓で覆われ、内装が透けて見える。建物の床や支柱も、黒曜石やら大理石やらで装飾され、場違いな高級感が漂っていた。

 看板にはリレーフや彫刻をあしらい、店名の文字も凝った意匠を施している――。


 古物(こぶつ)時計店『時ほぐし』。


 ――看板にはそう銘打たれていた。