「さぁ、解答編の始まりです。時計のトラブルならお任せを……この時任刻が、悩みを解きほぐしてご覧に入れましょう」
店長の時任が、営業スマイルで周囲を見回した。
猫の額ほどの中古時計店に会した全員が、固唾を飲んで彼を見守っている。
「今回、当店の商品が何者かに盗まれそうになりました」
店長は一人の女性客にてのひらを差し伸べる。
「あなたは毎日、当店へ足を運んでいらっしゃいましたね? 防犯カメラの記録からも明白です。また、当店の通販サイトにもIPアドレスが残っています。あなたは、当店で売られていた腕時計が欲しくてたまらなかった……風師さん、現物をここに」
「はい店長」
風師と呼ばれた若い女性店員が、該当商品を携えて歩く。
ロレックスの高級腕時計・GMTマスターだ。ベゼル部分にダイヤ、サファイア、ルビーをあしらった豪華な逸品は、中古でも一千万円を下らない。