「まさか……熱中症のせいで幻覚を見ていたのかも」
　
気づかないうちに熱中症に掛かり、黒電話という幻覚を見て意識を手放してしまったのかもしれない。

「お父さん、心配してるよね？」
　
お父さんは私がこの部屋に居るなって思っていないはずだ。今頃、私を探して外に出ているかもしれない。
　
私は慌てて部屋のドアノブに手を掛ける。扉を前に押しさっきまで居た部屋に戻る。

「お父さん！」

「うわぁっ！」
　
扉を開けた瞬間、頓狂な声が上がった。

「へ……？」
　
その拍子に頭上を段ボールが飛ぶ。

その光景がスローモーションに見え、段ボールの口が開いた時、中に入っていた小物たちも宙を飛んだ。

そのまま落下する事に気がつい私は、ギュッと目を瞑り部屋の中に小物たちが落下した後の音が響き渡る。
　
何事かと思いそっと目を開いた私の足元には、骨董品に埋もれ倒れているおじいさんの姿があった。

その姿を目の当たりにした私は、顔を青くし慌ててしゃがみ込んだ。

「だ、大丈夫ですか？！」
　
おじいさんの上に乗っている骨董品をどかしながら、安否を確認する為に体を少し揺らす。

「しっかりしてください！」

「だ、大丈夫じゃよ……」
　
おじいさんは頭に手を当てながら体を起こす。幸い段ボールの中に入っていた骨董品は小物ばかりだったから、大きな怪我をしているようには見えなかった。

でも骨とかにヒビが入っているかもしれない。