『彩芽へ、黒電話を使ってこの番号に電話をかけなさい』

「……この字は」
　
手紙に書かれたこんな達筆な字を書くのは、じぃじで間違いないだろう。

でも黒電話を使って電話をかけろってどういう事だろう？
　
紙に書かれたメッセージを見下ろし首を小さく傾げる。
　
黒電話で電話をかけろと言われても、回線が繋がっているようには見えない。

じぃじの悪戯だろうか？　そんな事をふと思ったけど、もしかしたらじぃじが亡くなる前に私に伝えたい事があったのかもしれない。
　

そう考えた私は受話器を持って紙を机の上に置く。ダイヤルを回しながら受話器を耳に当てる。

繋がるどうかは半信半疑だ。でも繋がらなかったらそれはそれで構わない。じぃじの悪戯だったと済ませる事ができるのだから。
　
電話の相手が出るまで受話器を耳に当て続けると、どこかに繋がったのか声が聞こえてきた。

『お前さんとの約束を果たそう』

「えっ？」
　
その言葉を聞いた瞬間ぐらりと目の前が揺れた。手から受話器が離れそのまま後ろに倒れ込む。

『さあ、おいで彩芽』　
　
とても懐かしい声と共に私の意識は眠りの中へと消えていった。