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「てゆうかじぃじ……何で黒電話なんか使ったの? 私を過去に呼ぶ為の物なら他にたくさんあったでしょ?」

「なんじゃ? 不満だったかのう?」
 
お母さんと別れた私はじぃじのお店に戻って来た。アヤちゃんはお父さんを待っていると言っ
てそのまま病院へと残った。きっと今頃は家族三人で過ごして居る頃だろう。
 
お母さんが自分の気持ちをお父さんに伝える事が出来たのかは分からない。でも私は信じている。お母さんが自分の気持ちを伝えられる事を。

「いや〜だってアヤちゃん、昔黒電話で良く遊んだじゃろ?」

「……え? そうなの?」
 
そんな記憶欠片も残っていないのだが? 私が黒電話を使って何して遊んでいたというのだ?

「お前さん良く受話器を持って【もしも〜し聞こえますか〜?】って言っててのう。だから黒電話を使えば、もしかしたら成功するかもしれないと思ったんじゃよ」
 
私が小さい頃よく黒電話を使って遊んでいたからといっても、そういう発想に至ると思わないのだが……。

これもじぃじの変わっている部分の一つなのだろうから、とやかくは言えない。現に私はここに居るわけで、じぃじの考えた作戦は見事に成功したのだから。

「でも何であの番号にかけるだけで、私を過去に飛ばす事が出来たの?」

「それを言ったら面白くないだろう?! 秘密じゃ秘密!」

「ええ! そんなぁ……」
 
やはり種明かしはしれくれそうにないか……。
 
ガクッと肩を落としたじぃじは奥の部屋に行くと、姿を消したはずの黒電話を持ってきた。

「ああ! その黒電話! 姿が見えなかったから、自分で姿を消したと思っていたのに……」

「実は黒電話を設置するのはこれからだったんじゃよ。友達に一回見てもらってから置こうと思ってのう」

「あ……まさか」
 
前にじぃじが言っていた大切なお客さんって……その黒電話を作った人なんじゃ?