それからジュースを買って戻って来たじぃじは、申し訳なさそうにペコペコと頭を下げて来た。

泣いたせいで目が赤くなってしまったお母さんを見てじぃじは酷く慌てた。

「どうしたんじゃ、結さん! 目が腫れておるぞ!」

「ちょ、ちょっと泣いてしまいまして」

「な、泣く?」
 
お母さん言葉に首を傾げるじぃじを見て、私とお母さんは顔を見合わせて笑った。

アヤちゃんはじぃじに買って貰った缶ジュースのカルピスを飲みながら、お母さんを見ていた。
 
それに気がついたお母さんは、優しく微笑むと言う。

「さあおいで、彩芽」

「……っ!?」
 
その言葉に聞き覚えはある事に気が付き、アヤちゃんを膝の上で座らせているお母さんに目を
向けた。
 
確かあの黒電話から聞こえた言葉だったはずだ。あの声はがお母さんの声だとしたら、あの黒電話を用意したのは……お母さん?

「あの、一茂さん」

「ん?」
 
お母さんはアヤちゃんの髪を優しく撫でながら言う。

「少し……彩芽ちゃんと二人きりにしてください」

「……分かった」

じぃじは何も言わずゆっくりと頷くと私を手招きする。

私はちらっとお母さんの方を見てから、じぃじと一緒に病室を出た。

二人きりにして欲しいという事は、おそらくアヤちゃんに話すのだろう。自分の事を――

「さて、と……」
 
じぃじは私の方に体を向けると、深々と頭を下げて来た。