「じぃじ! なにするの?!」

「アヤちゃん。ちょっとじぃじとジュース買いに行こうのう」
 
【やだやだ】と駄々を捏ねるアヤちゃんをあやしつつ、じぃじは私を置いて病室から出て行った。

……あれ、ちょっと待ってよ! 今ここでお母さんと二人きりにされても、いったい何を話せば良いの?! 何で私を置いて行くのじぃじ!!
 
内心焦りながらそっと振り返ると、お母さんは顔を伏せていた。

「あ、の」
 
声を掛けようとした時、顔をあげたお母さんはニッコリ笑うと言う。

「綾乃さんは……一茂さんのところで住み込みでお手伝いをしているそうですね」

「あ、はい」
 
お母さんは話を逸らすように話題を変えてきた。

さっきの雰囲気とは違ってお母さんが纏っている雰囲気からは、さっきみたいな緊迫したものは感じ取れなかった。もしかして気のせいだったのだろうか? 

「綾乃さんは、今はおいくつなんですか?」

「十六歳です」

「という事は……高校一年生?」

「そう、ですね」

「まだ高校生なのに、一茂さんのお手伝いをしているなんて偉いですね」
 
お母さんは感心したのか、我が子を褒めるように言ってくれた。それが少し擽ったくて、私は
照れながら目を逸した。

「でもご両親の方は大丈夫なのですか? 心配して居ないんですか?」

「……それは」
 
私の様子を伺っていたお母さんは、ハッとすると慌てて口を開く。

「もしかして……触れちゃいけない事を聞いてしまいましたか?!」

「い、いえ! 全然触れてもらって構わないです! ただちょっと、帰れない事情があるだけですから!」

「……だから、一茂さんのところで住み込みでお手伝いしているんですね?」
 
お母さんの確認するかのような発言に、私は渋々と頷いた。