このまま小さな私にスマホの事を教えたところで、将来的には発売されるものだ。

その記憶は私に引き継がれる事になるから、何の支障も出ないのだろうけど、ここはやっぱり言わない方が良いだろう。

「これはね……鏡だよ!」

「かがみ?」
 
アヤちゃんは可愛く小首を傾げる。確かにこんな真っ黒な画面の物体を、鏡と言われたら疑問に思うところだ。

今頃アヤちゃんの頭上には、ハテナマークがいくつか浮かび上がっている事だろう。少し申し訳ないと思いつつじぃじの車がお店の前に停まるのが見えて、私はポケットにスマホを戻した。

「ほら、おじちゃんが来たから行こっか」

「うん!」
 
アヤちゃんの手を取った私は一緒にお店の外へと出た。

✩ ✩ ✩

じぃじの車に乗った私たちは、お母さんが入院している病院へと向かっていた。アヤちゃんは

私の隣に座りながら外の景色を眺めている。と言っても私にとっては見慣れた景色だから何
とも思わないけど、アヤちゃんにとっては珍しいものばかりらしい。
 
市ヶ谷町交差点を左折するとその先に新見附橋が見えてくる。新見附橋から飯田橋方面を見ると、外壁に桜の木が植えられているのだ。

桜が満開になる頃には、たくさんの人たちが桜を見に来たりする。
 
近くにある外濠公園ではお花見をしに来る人たちも居て、三月下旬から四月上旬までこの辺りはたくさんの人で賑わっているだろう。
 
あと有名なところと言えば東京タワーや東京スカイツリーだ。

しかしまだこの時代では東京スカイツリーは存在していない。東京スカイツリーが完成するのは平成二十四年なので、今から八年後の事である。