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翌朝。アヤちゃんを預けに来たお父さんは、じぃじと特に会話をする事なく、先にお母さんが入院している病院へと向かった。それを寂しそうに見つめるアヤちゃんの姿を、私はただじっと見ていた。
「綾乃さん。その服似合っておるよ」
「あ、ありがとうございます」
今着ている服は昨日お父さんが持って来てくれたものだ。
半袖の白いブラウスに、膝下まで丈のある薄いピンクのスカートというシンプルな装いだが、これはこれでとても涼しい。
じぃじの話しによれば、この服はお母さんが着ていたものらしい。もう着れなくなって処分しようかと迷っていたらしいのだが、大きくなった私に着てもらう為にあえて残したそうだ。
確かにこうして大きくなった私がこの服を着ているわけなのだが、この時代のアヤちゃんよりも先にこの服を着てしまって良かったのだろうかと罪悪感が生まれるところだ。
「そういや綾乃さん。昨日着ていた服からこんな物が出てきたんじゃが、これはお前さんの私物で間違いないかい?」
「えっ?」
じぃじの言葉に目を瞬かせた時、差し出された物を見て一気に顔が青くなるのが分かった。
「そ、それ! 私の物で間違いないです!!」
じぃじに差し出された【スマートフォン】を、奪い取るかのように掴んでスカートのポケット
に押し込んだ。
「なんじゃ……そんなに慌てて? 大事な物なのかい?」
「は、はい……一応」
じぃじは私の様子に疑問を抱きながらも、車の鍵を持つと先に店の外へと出る。
「今から車を持って来るから、ここでアヤちゃんと待っててくれ」
「わ、分かりました」
その言葉に二度頷き、じぃじの姿が見えなくなった事を確認した私は、深く溜め息を吐いた。後ろの壁に寄りかかりそっと胸を撫で下ろす。
「はあ〜……危なかった」
スカートのポケットに押し込んだスマートフォンを取り出し、暗くなっている画面を見下ろす。