じぃじの言っている事が本当なら、お母さんは治療を途中でやめたのだ。そのせいで癌の進行が早まって亡くなってしまった。
 
治療を途中でやめる事をお母さんが本当に望んだのなら、部外者である私が口を出して良い事じゃない。

でも私は……。

「だから儂は、お前さんを結さんに会わせたいんじゃよ」

「……えっ?」
 
じぃじの言葉に伏せていた顔を上げる。
 
そうだ。じぃじはさっきも似たような事を言っていた。私をお母さんに会わせたいって、どういう事なの?

「せっかくの夕飯が冷めてしまうからのう、話しはここまでじゃ」

「ええっ!」
 
一番気になるところで話を切り上げたじぃじは、出来たての夕飯に手をつけていく。

(もう、何なの?)
 
美味しそうに夕飯を食べ続けるじぃじを見て、ざわつく心を何とか沈めながら箸を持った。

✩ ✩ ✩

 
夕飯を食べ終えお風呂から上がった私は、じぃじに挨拶をした後にばぁばの部屋に戻って布団に入った。
 
そのまま仰向けに寝て暗い部屋の天井を見つめた。

「はあ……」
 
重々しく溜め息を吐き明日の事を考える。
 
明日は十四年ぶりにお母さんに会う事になる。でもそのお母さんは私の事を知らない。私だっ
てお母さんの事をあまり知らない。