その特集番組では若年性乳がんを発症した女性の生涯を綴ったものだった。

余命宣告をされ残された時間で自分に何が出来るのかと悩んだその女性は、子供が二十歳になるまで誕生日にプレゼントを贈り続けるという選択をしたのだ。
 

女性は治療を続けつつ、二十歳になる子供の誕生日プレゼントを楽しそうに選んでいた。その姿を私は涙を浮かべながら見ていたのをよく覚えている。

「半年ほど前に乳がんだと宣告されて、それから治療をしてきたんじゃが……先月に入って骨に転移したそうじゃ」

「そんな……」 
 
最初はお母さんの死因を知ったところで、何とも思わないだろうと思っていた。昔の事だし私には関係のない事だからと、そう思っていたのだ。

でもいざ知ってみると、今直ぐにでも泣きたい衝動に駆られた。
 
お母さんは誰よりも怖かったはずだ。突然【あなたは乳がんです】と宣告されて、未知の恐怖が自分を襲って、ゴールの見えない奈落に放り出された気分になっただろう。
 
小さい私がお母さんの病気の事を理解出来るはずがない。アヤちゃんは今でもお母さんは帰って来ると思っているはずだ。

だからお父さんはアヤちゃんを連れて行きたくなかったのだろう。真実を知った時の悲しみを、少しでも軽くする為に……。

「前にお見舞いに行った時に、このまま治療を続けるか悩んでおったよ」

「っ! どうしてですか?! 治す為には、元気になる為には、治療を続けないと駄目なのに!」

「治療を続けても状況は良くならず悪化していく一方……。だから治療を続けても無意味になると言っておったよ」

「……っ」
 
私は苦しくて顔を下に伏せた。