「あの……良いんですか?」

「ん? 何がじゃ?」
 
じぃじと一緒に夕食の準備をしている時、私は気になった事をじぃじに聞いてみた。

「その、私は部外者ですし……お見舞いに行くのはどうかと」
 
私はこの時代では部外者だ。部外者である私がこれ以上足を踏み入れて良いものなのか、少し悩むところなのだ。

「それは構わんよ。それにお前さんには、結さんに会ってもらいたからのう」

「は、はあ……?」
 
じぃじの言葉に少し首を傾げた。
 
お母さんに会ってもらいたいとは、いったいどういう意味なのだろうか?

「結さんだってアヤちゃんに会いたがっているに決まっておる」
 
じぃじの言う通り、お母さんだってアヤちゃんに会いたがっているはずだ。ずっと自分の娘に会えないだなんて寂しいに決まっている。
 
でも……どうしてお父さんは、アヤちゃんを連れて行ことしないのだろう? 

まだ小さいからという理由のせいだろうか? それとも別に理由があるのだろうか?

「一応、綾乃さんには結さんの事を話しておこうと思う」

「っ!」
 
じぃじに椅子に座るように促され、私は覚悟を決めてじぃじの正面に座った。

「結さんの病気はのう……乳がんじゃよ」

「乳がん?!」
 
【乳がん】という単語がじぃじの口から出た時、心臓が大きく跳ね上がった。

「【若年性乳がん】と言って、特に若い人に見られる乳がんでのう。結さんの年齢でなるのは珍しいらしい……」
 
若年性乳がん――その言葉には聞き覚えがあった。

前にテレビでその特集を見たことがあるのだ。

二十代から三十代の若い世代の乳がんで、血縁者の中で乳がんになった人が居ると発症する確率は高いと言われているものだ。