つい勢い任せで言ってしまったけど……やってしまった! 

後悔という名の感情が後から押し寄せて来て、頭を抱えたい衝動に駆られる。今のは踏み止まる事が出来たはずだ。なのについ感情的になって言ってしまった。

「えっと……これは私個人の意見ですので、特に気にせず」

「そうじゃよ! 綾乃さんの言う通りじゃ!」

「へ?」
 
私の言葉を遮るようにじぃじが大きな声でそう叫んだ。
 
アヤちゃんは目を瞬かせながらお父さんの顔を見上げる。それに気がついたお父さんは、少し気まずそうにアヤちゃんを見下ろした。

「トモ、お前はアヤちゃんの事を何も考えておらん! アヤちゃんの気持ちも知らず。今のアヤちゃんに、お前が必要だって事くらい分かっているだろう!?」

「……そうだね」
 
お父さんはアヤちゃんの髪を優しく撫でると、私たちに目を向けてそう小さく呟いた。

その表情はどこか寂しく、悲しいものに見えて、その顔を見たら胸が苦しくなった。

「確かに彩芽の事はずっと親父たちに任せていたよ。でも……それは仕方のない事なんだよ」

「その理由はちゃんと分かっておる。だがのう、トモ。だからと言って、お前はアヤちゃんの気持ちを考えた事があるのか?」

「……それは」
 
じぃじに痛いところを突かれたのか、お父さんは複雑な表情を浮かべた。
 
やっぱり昔のお父さんは、私の事を気にかけていなかったのだ。じぃじのところに預けておけば寂しがる事はない。一人でも大丈夫だ。そう考えていたのだろう。

でも今は違う。今のお父さんは私との時間を大切にしてくれているのだ。

気がついた時には隣に居てくれて、仕事がない日は私と一緒にショッピングモールや外食をしに外に出る。

私が風邪を引いた時は会社を休んでまで看病をしてくれる。誕生日には私の好きな物を買って来てくれて、手作りの誕生日ケーキを作ってくれる。
 
なによりも私の事を考えてくれるお父さんが私は大好きなのだ。