「じゃ、じゃあ私はカルボナーラで良いです」

「それだけで良いのかい?」
 
じぃじの言葉に私は小さく頷いた。

じぃじが奢ってくれるからと言っても、さすがに遠慮しなければならない。本来なら使わなくても良いお金を使わせてしまうのだから。
 
食べたい物が決まったところで、定員さんを呼んでメニューを見ながら、名前を上げていった。

「あ、そうだ。服ありがとうございます」

じぃじは目を瞬かせると思い出したように口を開いた。

「なんじゃ、トモのやつ……持って来たなら一言くらい言ってから、仕事に行けば良いものを」

「おじいちゃんがお客さんと話しているのを見て、遠慮したんじゃないですか?」
 
私の言葉にじぃじは子供みたいに頬を膨らませるとぶつぶつと何か言い始める。

普段は良いおじいちゃんなのに、たまにこうして子供じみた性格が出る時がある事は、今は言わない方が良さそうだ。

「まったく、あいつは……仕事だ仕事だと言って、ちっともアヤちゃんの気持ちを分かってやろうとしない」
 
じぃじの言葉に胸が小さく痛んだ。

「……」
 
顔を軽く伏せてじぃじの言う通りだと思った。

確かに昔のお父さんは仕事が何よりも大事で、私の事をあまり気にかけてくれなかった。

物心ついた時お父さんに嫌われているのだと思っていた。だからあのお店に行くのが楽しみで、じぃじに会えるのが楽しみで仕方なかったのだ。

あそこに行けば寂しさを埋められる、甘える事が出来たから。