音を立てないようにそっとアヤちゃんから離れ、部屋にある時計に目を向ける。

「もう十二時か……」
 
時間とはあっという間に過ぎるものだ。

昨日この時代にタイムスリップして来たと思ったらじぃじとご飯を食べて、若い頃のお父さんに出会って、小さな私と一緒におままごとをして遊んで普通に馴染んでしまっている。

「私は寝たから当分の間起きないとして……問題はじぃじだ」
 
お客さんの相手をすると言ったきり、奥の部屋から出て来ない。込み入った話をしているのか
それとも聞かれたくない話をしているのか。
 
と言っても私が口出しする事じゃない。変に口を出して未来が変わってしまったら困るのだ。

「でもやっぱり、自分と遊ぶのはまずかったかな?」
 
【過去の私】とはいえ今日の事は記憶に残るはずだ。

……いや待って。この子は過去の私だから今日の日の記憶は今の私に引き継がれる事になるのだろうか? 

もしそうなら未来に帰ったとしても小さい頃の思い出に、一つ新しい思い出が追加されるだけになる。
 
もちろん未来の私の記憶に追加されるのだから、これといった変化は特に起きないだろう。だったら少なからず、小さな自分にはある程度の接触が出来るという事になる。

「遊んであげるくらいだったら……大丈夫かな?」
 
そうブツブツと独り言を呟いていた時、部屋の扉が横に引かれる音が聞こえ、私は後ろを振り返った。

「あ、おじいちゃん。お客さんの相手は終わったんですか?」

「ああ。ちょっと相談事を聞いていてな、思ったより時間が掛かってしまったよ」
 
じぃじはそう言い軽く息を吐くと部屋の時計に目を向ける。