「うん、見てたよ。二人共かっこよかったね」
 
私の言葉にアヤちゃんはうんうんと頷く。その姿を見て思わず笑ってしまった。

「お〜い……彩芽〜居るか?」

「っ!」
 
部屋の直ぐ入り口で聞き覚えのある声が聞こえ、私は慌てて振り返った。そこには見覚えのある壮年の男性が立っていた。

「あ、パパ!」
 
アヤちゃんはそう言うと、パパと呼んだ男性の足に抱き付いた。

「まったく……車から降りた途端走って行くから、転ばないか心配したんだぞ?」

「だいじょうぶだよ! あやめ、ころんでもなかないもん!」

「ホントかな〜?」
 
男性は優しい笑顔を浮かべると、アヤちゃんの頭を撫でる。二人のやり取りを見つめながらアヤちゃんのお父さん……いや――

「ところで……」
 
私に目を向けた男性は口を開くと言う。

「親父が言っていた綾乃さんは、あなたですか?」
 
そこに立っていたのは紛れもない、若かりし頃のお父さんだったのだ。