「な、何か……見られてる?」
 
アヤちゃんは私をじっと見てくると小さく首を傾げた。

誰この人? とでも言いたげな表情だ。アヤちゃんは私に指をさすと容赦なく聞いて来る。

「ねぇじぃじ、あのひと……だれなの?」

「あの人はお手伝いさんじゃよ。ばぁばが居ない間、ここを手伝ってくれておるんじゃ」

「ふ〜ん」
 
自分で聞いておきながら私の事にあまり興味がないのか、アヤちゃんはじぃじから下ろされると、靴を脱ぎ捨てて奥の部屋へと走って行く。

「じぃじ〜、テレビみていい〜?」

「ちょっと待ってなさい」
 
じぃじはそう言うと私のところに歩いて来ると言う。

「綾乃さん、すまないが奥の部屋でアヤちゃんの相手をしてくれんか?」

「……ええっ! 私がですか?!」
 
じぃじの言葉に思わず顔が引きつる。

何故この時代に来てまで自分と遊ばなければならないのだ?! いつもだったら、じぃじが遊び相手になってくれていたのに、今日はどうしたのだろうか? 

私は今、自分の遊び相手になっている時間などないのだ。早く黒電話を見つけて元の時代に戻らなければならないというのに。

「実は今日、大切なお客さんが来る日でなその人の相手をせんといけんのだ」

「そ、そうなん、ですか」
 
いかにも在り来たりな理由だ。大切なお客さんが来るのだったら、今日くらい私を預かるのを断れば良かったのだ。そうすれば、私が自分を相手にする事もなかったのに。

この思いを口にしたいところだが、今はそういうわけに行かない。じぃじがお客さんの相手を
するとなると、黒電話の事は聞けないだろうし、時間を潰すならアヤちゃんの相手をするべきだ。  

私は肩を落として言う。

「わ、分かりました」
 
この先の事を考えるとそう言わざるを得なかった。