「おお〜、アヤちゃん! 良く来たのう」

「はやくじぃじに、あいたかったんだもん!」
 
そんな素直な言葉が言える自分を見て軽い目眩が私を襲った。

小さい頃の記憶なんてほとんど覚えていない。だからこうして二歳の自分がどうだったのか見る事が出来るわけだが。

感想はもちろん、今直ぐこの場から逃げたいくらいの恥ずかしさが込み上げてくる。

「きょうは、なんのおはなししてくれるの?」

「ん〜……そうじゃな。それじゃあ、じぃじの昔話でも聞くか?」

「うん!」
 
元気よく返事を返す自分を見て、私はある事を思い出した。それはまだ私が中学生になった頃
の話になる。
 
中学生になると私たちは思春期というものを迎える。いわゆる反抗期というものだ。

その時期もあってかその頃の私はじぃじを凄く嫌っていたのだ。理由は一つじぃじが言っていた【自分の昔話】が原因だ。
 
小さい頃から同じ話ばかりされれば、話の内容を覚えるのは当然のことだ。

ここに来る度【じぃじが学生の時の話】、【じぃじとばぁばの馴れ初め】、【じぃじが好きな骨董品】など、同じ話ばかりされるものだから、苛ついた私はついカッとなって【うるさい! 毎回同じ話ばかりしないでよ!】と、怒鳴ってしまったのだ。

そのせいもあってか以来、じぃじが自分の話をすることは少なくなった。
 
あの時、怒鳴ってしまった事は反省している。

あんな事言わず素直にじぃじの話を聞いておけば良かったと、少し後悔している部分もある。だからじぃじが小さな私に言う、自分の昔話をもう一度聞きたいと思ったのだ。

「じ〜っ」

「っ?」
 
そんな事を考えていた時、前の方から視線を感じた。視線を感じる方に目を向けると、じぃじ
に抱っこされている小さな私――アヤちゃんが私をじっと見て来ていたのだ。