とりあえず二歳の私の事は気にしないで黒電話を探す事を優先しよう。もしかしたらじぃじが黒電話のある場所を知っているかもしれない。

今度それとなく聞いてみよう。何とか考えがまとまった私はじぃじを見つめた。
 
するとじぃじは何かを思い出したように手をポンッと叩くと言う。

「ところでお前さん、どこに住んでおるんじゃ?」

「……えっ?」
 
突然の質問に首を傾げた時、私の中に重大な問題が飛び込んできた。全身に稲妻のようなものが走り顔を青くして伏せる。黒電話を探す前に一番重要な問題を忘れていたのだ。

(私……帰る家がないんだった!)
 
急ブレーキをかけたような動揺が広がり、握っていた拳に汗がじわりと吹き出る。
 
黒電話を見つける前にまずは帰る家を確保しなければならなかった。

ホテルに泊まろうにも泊まれるだけのお金を持ち合わせていない。

知り合いや友達が居れば頼み込んで何泊か泊めてもらうところだ。しかしこの時代で私のことを知っている人は絶対に存在しない。

「家が近ければ迎えに行こうかと思っていたんじゃが……どうした? 青い顔を浮かべおって?」
 
じぃじに声を掛けられ下げていた顔を上げる。唇を軽く噛んで言葉にするか迷う。

この時代のじぃじは大きくなった私の事を知らない。頼み込めば泊めてくれるかもしれないけど、こんな見ず知らずの私を泊めてくれるだろうか?

「えっと……実はちょっと、家に帰れない事情が……ありまして」

「なんじゃ? 家出か?!」

「家出……というより、家がないと言いますか……」

「……ふむ、簡単に説明出来ない事があるんじゃな」

「そ、そうですね」
 
【この状況を一から説明してみろ】なんて言われたら、苦手である数学の因数分解の説明をする方がまだマシだ。

簡潔に【未来からやって来たあなたの孫です】と言えたら、どれだけ気持ちが楽になるだろうか。