部屋の掃除を終えた私はじぃじに淹れてもらった、キンキンに冷えた緑茶を飲みながら酷く乾いた喉を潤していた。

「はあ……美味しい」
 
小さくそう呟き部屋の中を見渡す。そして今の状況を整理し始める。
 
私は平成三十年から平成十六年へタイムスリップしてしまった。原因はおそらくあの黒電話だろう。

それならば、元の時代に戻るにはその黒電話を使う必要がある。しかしあの部屋で目が覚めた時、机の上に黒電話の姿はなかった。

まだ黒電話が設置されていなかったのか、それとも役目を終えた黒電話が自ら姿を消したのか。何にせよまずは黒電話を探すところから始めなければならない。

「掃除ありがとう、助かったわい」

「い、いえ」
 
じぃじも一休みする為かコップに緑茶を注ぐと、椅子を後ろに引いて私の目の前に座った。そんなじぃじを見つめながら考える。

大体は手紙を残したじぃじが私をこの時代に呼んだと考えるのが普通だ。

しかしじぃじにそんな高度な技が使えるとは思えなかった。発明好きとか、機械の改造が趣味だとか言われれば少し考えるところなのだが、私の知っているじぃじは発明好きでも、機械の改造が趣味でもない。

ただ珍しい物が大好きなちょっと変わった人なのだ。

「そういえば、まだお前さんの名前を聞いていなかったのう?」

「うっ!」

【ついに来た】と思った私はビクッと肩を上がらせた。

ここで自分の名前を正直に応えて良いのか迷うところだ。それは自分がとった行動によって未来が大きく変化しまうかもしれないからだ。

例えば私同様に、過去にタイムスリップしたアニメや漫画の主人公たちも、自分の居た時代の歴史や出来事を変えないために自分に関する事や未来の話しはしないだろう。