じぃじに疑いの眼差しを向けられた時、咄嗟にそう応えてしまった。

今はお手伝いさんとしてこの場に居る方が、安全なのだろうと思ったからだ。お手伝いさんとして居れば変に勘ぐられる心配もなさそうだし。

「だったらそうだと、素直に言えば良いのじゃ」

「す、すみません」
　
悩まず言えたら直ぐにそう言ってるよ！　内心そう思いながら溜め息を吐く。

「じゃあさっそくじゃが、この部屋の掃除を頼んでも良いかぃ？」

「えっ？　部屋の掃除？」
　
てっきり骨董品整理を手伝うのかと思ったけど、そうではないみたいだ。部屋の掃除をするという事は私の立ち位置は家政婦だろう。

「貴重な休みを取ってしまってすまないのう。なんせ、はっちゃんが今日から旅行に行ってしまったんじゃよ」

「ばぁ……おばあちゃんが？」
　
じぃじの言う【はっちゃん】と言うのは、私の祖母である三留羽初子(みとばはつこ)の事だ。
　
旅行に出掛けたのなら当分の間は戻って来ないだろう。

私とお父さんが遺品整理をすると決めた日も、前から友達と旅行に行く計画を立てていたらしく、ばぁばは友達と一緒に長野県の方へ温泉旅行に行ってしまったのだ。

今頃、野沢温泉でゆっくりと湯に浸かっている頃だろう。

「それを当日まで知らんくてのう、朝起きたら机の上に置き手紙があったんじゃよ」

「は、はあ……」
　
そう言ったじぃじは一度奥の部屋に戻ると、さっき言っていたばぁばの置き手紙を持って来て私に見せてくれた。

じぃじの言う通りそこには、【しばらく京都の方に旅行で行ってきます。お土産は八つ橋です】とご丁寧に買ってくるお土産の名前まで書かれていた。